インド百景 2021-2025

天竺の、風に吹かれて幾星霜。ライター坂田マルハン美穂が、南インドのバンガロール(ベンガルール)から発信

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(続き)こんな風に、大きな円を歩くのは生まれて初めてのことだ。運動場とはスケールが違う。しかも、聖なる山を常に右に感じながらの。アルナーチャラ山を中心に、北を12時の方角とするならば、ホテルの場所は7時あたり。そこを出発する。7時から12時のあたりまでは、交通量は少なく、サドゥー(ヒンドゥー教の行者)、もしくはサドゥー的な人々が座りくつろぎ、のんびり牛が歩く情景が広がった。

我々もまた、点在するヒンドゥー寺院や、シヴァ・リンガ(リンガム)に祈りを捧げるべく、サンダルを脱いで境内に入り、手を合わせる。

シヴァ神とは、ヒンドゥー教において、ブラフマーとヴィシュヌに並び、最も強い影響力を持つ3柱の神の一つ。ちなみに日本の大黒天は、このシヴァと大国主が融合した神格だとされている。

世界の破壊と維持、再生を司るとされているシヴァ神の、ここアルナーチャラ山は聖地なのだ。ゆえに、随所にてシヴァ・リンガが見られる。わたしが、インドに移住してまもないころ、このシヴァ・リンガという在り様を初めて知ったとき、とても驚いた。

丸みを帯びた先端の、円柱型のシヴァ・リンガ。それは即ち、シヴァの男性器だ。そのリンガの台座となっている器のような形状の「ヨーニ」と呼ばれるそれは、女性器だ。リンガとヨーニが一体化して、祀られている。

つまりこれは、男女の神が一体化している状況だ。リンガがこちら側に飛び出しているわけだから、シヴァ・リンガが据えられた寺院の内部は、即ち女性の胎内とみなされているという。

もっといえば、地球が子宮であるとも解釈できる気がする。わたしは宗教の専門家ではないので、書いていることは頓珍漢かもしれぬ。しかし諸々が「ひっくり返った」気がして、驚嘆したのだった。

更には、ヒンドゥー教の儀礼の際には、そのシヴァ・リンガの上に、ダヒ(ヨーグルト)やギー(精製バター)などをダラダラとかけるのである。もう、見るからに、なんともはや、である。

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さて、ひたすらに歩く。12時から2時くらいの方角に至ると、だんだん交通量が増えて来て、巡礼地とは思えない日常の雑踏だ。わたしは昔から、歩くのが人よりもかなり速い。だから気づいて振り返れば、夫はいつも、遥か彼方。

ゆっくり歩いて、と言われるが、わたしにとってゆっくり歩くのは、むしろ疲れる。特に、自分自身の考えごとをしているときには。人には、自分に合ったペースがある。快適なリズムで歩きたい。だから、歩いては待ち、歩いては待ち、を繰り返す。

(※仕事のコーディネーションや、夫以外の他者と歩くときは、もちろん相手の速度に合わせるよう心がけております。夫……すまぬ)

聖山を常に右手に感じながら、しかし、周囲の情景はどんどん変わる。後日、じっくり訪れようと思っている寺院も目前に現れる。そのときに閃いた。この巡礼路は、「まるで曼荼羅のようで、人生そのものだな」と。山あり谷あり、晴れの日もあれば雨の日もあり。

わたしたちは、死ぬ瞬間まで、不確かな円環を、歩いている。

この閃きをわたしは、自分の足で歩きながら、感じ取ることができた。本当によかった。自分の人生にとって、これもまた、大きな収穫のひとつだ。綴りたいことは尽きぬが、今はこの直感の享受をゆっくりと、咀嚼したい。

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途中で寺院に立ち寄ったりしたこともあり、予想以上に時間がかかっている。お腹も空いて来た。7割ほど歩いたら、ランチにしようと自分の中で決めていた。と、ちょうど目の前に、それまでにはなかった「きれいな感じ」のカフェが現れた。ここで朝食にしようと決め、夫が来るのを待つ。

「ここで朝ごはんにしよう」と夫に言うと、「あ、ここ前回、来たよ」と夫。夫は以前、彼のグルとサットサンの仲間とともに、このティルヴァナマライに来て、ラマナ・マハルシのアシュラム(修行施設)」を訪れていたのだ。

店内に入れば、誰もお客はいない。わたしは、導かれるようにひとつのテーブルを選ぶ。と、見上げれば、夫の信奉するMoojiと、夫のグルの写真が掲げられている。「ようこそ」「よく来たね」と言われているようだ。

大切なことは、予習しなくても、直感が教えてくれる……。ということを、改めて思う。なにしろ、1996年七夕の夜、ほぼ満席だったマンハッタンのスターバックスカフェで、夫の座る席の前に、唯一の椅子を見つけた日から、わたしの直感は、なかなかユニークに発揮されてきた。

小さな直感の蓄積も生きる自信に繋がる。故に、研ぎ澄ませ!

ちなみに朝食は、スイカジュースと、ここは南インドにも関わらず、なぜかこの界隈でよく見かける北インド料理のチャナバトラ。チャナ(ひよこ豆のカレー)とバトラ(揚げパン)だ。しかも巨大。やったらこってりした朝ごはんだ。

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朝食の後、そこからほど近い場所にあるラマナ・マハルシのアシュラムに立ち寄った。その聖なる場所は、夫にとって、とても大切な場所。わたしはしかし、その時点で、感受することはできなかった。

まだ、わたしは整っていない、と感じた。また後日、訪れよう。

それからホテルに戻り、シャワーを浴びる。万歩計は24597歩を指している。約3日分の歩行を数時間ですませた計算になる。流石に疲れた。緑に囲まれた遊歩道などを歩くのであれば、まだ気分もいいだろうが、蒸し暑くも喧騒の曼荼羅世界である。疲れて然るべきだ。

ビルケンシュトックのおかげで、なんとか無事、踏破できたが、膝と腰が少し痛い。ホテルのスパでマッサージをしてもらうことにした。

その間、夫は再びラマナ・マハルシのアシュラムへ、瞑想をしに行った。それぞれが、それぞれのペースで、ここで過ごす。残る日々も、慈しみつつ過ごそう。

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