インド百景 2021-2025

天竺の、風に吹かれて幾星霜。ライター坂田マルハン美穂が、南インドのバンガロール(ベンガルール)から発信

インドに暮らして20年。平穏すぎる、退屈だ……などという日が、ほぼない。もともと、退屈したいとは思わないが、少しくらいは平穏な日々が欲しい。しかし、続いてせいぜい2、3日。見事なまでに淀みなく、何かしらの「事件」が起こるインドライフ。言い換えればスリリングでエキサイティングな日常だ。

ところで我が家には4猫がいる。全て元野良猫だ。長女のNORA姉さんが、2014年7月、我が家の庭を「自分の城」と定めて暮らし始めて以来、我が家の猫ライフが始まった。以降、長男ROCKYを敷地内のテニスコートの排水溝で、続いて次男JACKを地下駐車場で保護した。その間にも、数々の野良猫らと関わってきた。駐車場で暮らし続けていたインヤン&モカの避妊手術や里親探し、その他、夫がこっそり餌を与えている数々の野良猫の存在……。

しばらく経ってのち、ある雨の日曜の夜。今度は目が半分、潰れたような状況で、ガリガリに痩せこけ、瀕死の状態だったCANDYを保護し病院へ連れて行くなどしているうちにも、家族となった。

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かつては猫専用ブログを設けて記録をし、猫ライフをレポートしていたが、このごろは人間のことで精一杯。猫に関しては、時折、写真を載せる程度になっていた。そんな矢先の一昨日。数カ月前から駐車場に現れていた巨大なシッポの女子猫が体調不良に陥った。色合いはCANDYにそっくりだが、尻尾が立派。餌を与えるのは専ら夫とドライヴァーで、わたしは自宅の4猫のみ、世話をしている。

インドにおいては、「野良動物に餌を与えるのは国民の義務」という、なかなかに衝撃的な事実がある。この件については、過去幾度となく言及してきたが、インドとはそういう国だ。動物保護を目的とするNGOも少なくない。ミューズ・クリエイションでもCUPAと呼ばれる団体を訪問した経験もあるなど、この件に関してもエピソードは尽きぬ。

ともあれ、だ。その巨大なシッポの女子猫については、早いうちにワクチン接種と避妊手術に連れて行くよう、夫とドライヴァーに何度も伝えていた。しかし、切羽詰まらなければ動かぬ二人。結局、体調不良になってはじめて、「明日、連れて行く」ということになった。よりによって、絶賛内装工事中。野良猫の面倒を見ている場合じゃない。しかしながら今しかない。手術前の12時間は食事をさせられないから、一旦、籠に捕獲して、自宅のユーティリティエリアで一晩越させる。

そして昨日、ドライヴァーがCUPAへ連れて行き、諸々の処置を終えて、数時間後に帰宅した。半分麻酔が残っている状態を見守り、トイレを準備し、食事をさせ、もぎ取られたエリザベス・カラーを諦め、引きちぎろうとする絆創膏を張り替え……という一連の作業は、もちろんわたしの仕事である。

野良猫を世話すると愛情がわくので、本当はあまり関わりたくないのだ。CANDYだって、そもそもは飼うつもりはなかった。あんなにか弱そうだったのに、旺盛すぎる食欲で、みるみるうちに肥満し、CANDYなどという甘い名前とは真逆の、攻撃的な性格の女子に成長し、完全なるジャイ子である。

ジャイ子の台頭により、我が家の猫世界の平穏は完全に破壊され、しばしばバトルが展開されることとなった。ROCKY兄さんだけが、誰とでも仲良くできる、いい子である。

ゆえに、猫カフェなどで大勢の猫が同居しているのを見ると、本当に驚く。なぜこんな狭い空間で、調和を保てているのか、不思議でならない。我が家の猫らが穏やかだったら、何匹でも飼っていいのだが……。

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シッポ女子はHINAと命名した。一番小さかったから雛。しかしすでに、かなりアクティヴで主張が強い。名前と実態が不釣り合いになる未来しか見えない。数日後、傷が落ちついたら、また駐車場に放つことになるが、数日間だけでも面倒をみてあげようと思う。

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