インド百景 2021-2025

天竺の、風に吹かれて幾星霜。ライター坂田マルハン美穂が、南インドのバンガロール(ベンガルール)から発信

長いと思っていたブータンの旅も、ついには最終日となった。今日は特に予定を入れておらず、のんびりと過ごそうと思っていたところ、朝から降り続く雨……。インドへ戻る前に心身を整えなさいと、天から言われているかのようだ。

[Bhutan 08]に記した通り、今回の旅行は、夫からの還暦祝い企画であった。この贅沢な旅を満喫するには、好奇心、体力、食欲、精神力……と、自分自身のコンディションが整っていることも大切だということを再認識している。

昨日は、人生において忘れ得ぬ大切な一日となった。ブータン旅のハイライトである「タイガーズ・ネスト(タクツァン僧院)」を訪れたのだ。

旅の前に「タイガーズ・ネストは必見だ」「すばらしい場所」と聞いてはいたが、実はしっかり予習しておらず「そこそこタフなトレッキングにふさわしい服装とコンディションでのぞむ必要がある」ということくらいしか考えていなかった。

タクツァン僧院は、パロ渓谷の切り立った断崖絶壁、標高約3,120mの場所に立つチベット仏教の聖地で、1694年に建立された。ブータン仏教の重要な巡礼地として知られている。

そもそもここには、8世紀、ブータンに仏教を伝えた高僧のパドマサンバヴァPadmasaṃbhava(チベットやブータンでは「グル・リンポチェ」と呼ばれる)が、雌のトラの背に乗って飛来したという伝説が残されている。彼は、ここにある洞窟で、3年3カ月3週間3日3時間瞑想して悪霊を鎮めたという。

朝4時半に起きて軽い朝食をすませ、6時に車で出発。7時前にトレッキングの出発点となる駐車場に到着。聞けばここは標高約2,535m。富士山の五合目ほどだ。そもそも三半規管が弱く高山病を心配していたわたしだったはずだが、大丈夫なのか……? と今更ながらの懸念。

最初の15分ほどは、息切れと軽いめまいがしたのでスローペースで歩く。しかし、水をたくさん飲みながら歩くうちにも、清浄な空気に浄化されたのか、心身に力がみなぎってくる。幸い、足腰の痛みもなく、登っては休み、登っては休みを繰り返しているうちに、目前に寺院が現れた。

朝の早い時間、あたりは霧(雲)に覆われて視界が悪く、遥かなる寺院の姿(目的地)が見えなかったことから、ひたすら近い未来を見つめて歩くしかなかった。

もしも雲がなく、低い位置から彼方の寺院が見えていたら、あまりの高さと遠さに、「あそこまで行くの?!」と、衝撃を受け、どっと疲れていたかもしれない。

視界が開け、雲間から寺院の姿が見え始めたころ、気づけば、いくつものグループを追い越していて、あたりにはわたしたちしかいない。その静けさがなんともいえず尊い。2時間弱かけて、500mほどの標高を登ってきたことにも驚く。よくがんばった! 

これまでの人生。わたしは地球各地のさまざまなパワースポットや聖地を訪れてきた。どの地もそれぞれに、すばらしい力と魅力を感じさせ、わたしにエネルギーを与えてくれた。

このタクツァン僧院は、格別だった。筆舌に尽くしがたい。

曼荼羅の如き人生の節目、2周目の始点を祝するにふさわしい、絶大なる力を与えてくれる場所であった。

パドマサンバヴァが瞑想したという洞窟の入り口に設けられた狭い部屋。わたしたち4人が座ると、もういっぱいいっぱいの空間だ。仏像の左手に、洞窟への扉がある。年に一度、開かれるというその扉の前の、石肌そのままの部屋に座して、わたしたちもしばし瞑想する。

他の巡礼者が来るまでの、静寂の十数分間が、途轍もなく稀有で有難いひとときであった。

その後、上階の伽藍に移動し、僧侶たちの読経を聞きながら、またしても数十分、祈らせていただく。

ここにはまた、必ず来たい。次は十年後の古希か。この先も、つつがなく巡礼旅ができるように。足腰を、心身を鍛えよう……と強く思う。

3人、霧、山の画像のようです
シマリスの画像のようです
2人の画像のようです
2人、登山・クライミングをしている人の画像のようです
写真の説明はありません。
2人、寺院の画像のようです
1人の画像のようです
3人の画像のようです
滝の画像のようです
山、マチュピチュの画像のようです
マチュピチュ、山の画像のようです
2人の画像のようです
山、雲の画像のようです
山の画像のようです
写真の説明はありません。
1人、木の画像のようです

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