インド百景 2021-2025

天竺の、風に吹かれて幾星霜。ライター坂田マルハン美穂が、南インドのバンガロール(ベンガルール)から発信

MUSE INDIA / HOMEPAGE

✈︎ 過去ブログ/2005〜2025

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神社を離れ、小腹が空いたので、たこやきやさんへ。カウンター席で、店主のご夫婦と、常連のお客さんとの会話を楽しみながら、和むひととき。

帰路、わたしが1歳から13歳までを過ごした近所を歩く。古かったはずのあの小さな家は、きれいに改築されて、そこにあった。しかし、誰かが住んでいるはずなのに、しん、としている。

かつて「汐見町」という名だったそこは、海辺の町だった。しかし、高度経済成長期の昭和40年代に、海浜の埋め立てや、山々の造成が進んだこの界隈は、年々海岸線が離れ、自然が損なわれた。

「このあたりに銭湯があったの」

「ここは貸本屋と駄菓子屋さんだった」

「この角はとみやさん。なんでもやさんだった」

「ここは、おかあさんが通ってた丸善美容室」

「わたしはときどき、矢野理容院で髪を切ってもらってた」

「八木さんという八百屋さん。魚屋さんもここにあってね」

「ここの三角公園でいつも遊んでいた」

「ここには音楽幼稚園があった」

「ここに汐見マーケットがあって、便利だったの」

「鬼ごっこをするには、ここの広場が便利だった」

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昭和のころの、活気溢れる商店街や公園は姿を消し、今は面影がない。味気なくも個性のない、無機質な住宅ばかりが立ち並ぶ。きれいだけれど、活気がない。淡々とした情景。子供たちが走り回り、ご近所さんが行き交い、賑やかだったあの町は、どこへ行った?

遥かな気持ちを抱きながら、水平線の彼方を夢想した。半世紀前のわたしが見た光景は、今はもう、ない。

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