
ティンプーに別れを告げ、東に位置するプナカを目指す。1955年に首都がティンプーに移されるまでの約300年間は首都だったというプナカまでは、実質約72km程度の距離。しかし、いくつもの峠を越えるアップダウンが著しいルートゆえに、車で2時間以上はかかる。
ティンプーは標高約2400mだったが、プナカは約1200mということもあり、気温は上昇、田園風景の緑が豊かになる。山裾にはライステラス(段々畑)が延々と広がり、なんとも牧歌的なドライヴルートだ。時折、背の高い稲が目に飛び込んできて、その種の成長に目を見張る。
途中の峠でピクニック・ランチ。晴れた日には、ヒマラヤ山脈を見晴るかす絶景のポイントらしいが、あいにくあたりは雲に包まれており、視界十数m。帰路の快晴を願いつつ、リゾートが準備してくれた「ポーク・ビビンパ」を楽しむ。お弁当の保温は象印
。道中には搾りたてのリンゴジュースやナッツ、ドライフルーツなどのおやつも用意されていて、至れり尽くせりだ。
ドライヴァーのDewaの運転が本当に巧みで丁寧なこともあり、普段は車酔いしやすいわたしだが、ほとんど身体に負担を感じない。時にヒマラヤスギの香りを、ひぐらしの鳴き声を、滝の水音を楽しみながらのドライヴだ。
信号がない国にて。
車は流れるように走る。過去に一度導入されたとのことだが、諸事情から撤去されたらしい。今は警官による手信号やドライヴァー同士の譲り合いで、交通ルールは保たれている。
やがて渓谷の川沿いにたどり着き、右手に「プナカ・ゾン」の壮麗な建築物が現れる。二つの川の合流点に位置する、プナカ・ゾンは行政の中心地であり、冬期には修道僧の滞在地にもなるという。
ブータン建国の父であるガワン・ナムゲルによって1637年に建立された。300年以上の歴史を持つこの建物は、ブータンにおける歴史的な行事の舞台でもある。初代国王の戴冠式や、五代目国王の結婚式、祝祭などが執り行われてきた。
インド菩提樹(ピーパルツリー)が立つ広大な広場では、毎年お祭りが開催されるという。奥にある寺院へは、靴を脱いで中に入る。写真を撮ることができないから、その壮麗で圧倒的な内観の様子を、脳裏に刻む。
中央に座す黄金色の仏陀像。左右にも黄金色の仏像が座して訪れるものを強い視線で迎える。伽藍はきらびやかに色とりどりながらも、歳月の流れを映して目に優しい落ち着いた色合いを呈している。仏画、彫刻、布……。ティンプーで垣間見たその創造の工程が思い返され、よりいっそうの尊さを感じさせられる。



















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