インド百景 2021-2025

天竺の、風に吹かれて幾星霜。ライター坂田マルハン美穂が、南インドのバンガロール(ベンガルール)から発信

MUSE INDIA / HOMEPAGE

✈︎ 過去ブログ/2005〜2025

  • Bb3fa1b9-2f94-473d-a1dc-d5b34c5c831c

    IMG_5974

    IMG_5983

    10日前の旅の記録を、ようやく完了。日々、記しておきたい出来事があふれるインドの日常。溢れかえってオーヴァーフロー。1日2000文字程度で収まるわけもなく、毎日綴っても断片だ。このごろのわたしは、古代遺跡や寺院などへの関心が強まっている。ゆえに、間が空いてしまったが、この記録は残しておきたい。

    2泊3日のリゾート滞在を終え、わたしたちは2台の車に分かれてバンガロールへ戻ることにした。急いで戻る必要があるメンバーは他の1台に、わたしは別の寺院へ立ち寄るというArchanaの車に乗せてもらった。

    目的地は、リゾートのあるSakleshpurからさらに南西へ車で2時間ほどの場所にある。西ガーツ山脈の懐にあるクッケ・スブラマーニャ寺院 (Kukke Shree Subrahmanya Templ)だ。バンガロールとは反対方向だが、せっかくの機会。腰痛があるので、長距離ドライヴは控えるべきかとの思いも脳裏を過ぎったが、①Archanaの車はファーストクラスの如き快適さ ②ドライヴァーの運転が上手 ③昨今のインドの道路事情はかなり向上している……という3点において問題ないと考え、同行させてもらったのだった。

    結果、これもまた稀有な経験だった。ちなみに、この旅のあと、腰痛はかなり軽減している。4つもの寺院を巡ったご利益か、素足で温まった石を歩きパワーを享受したおかげか、とにかくここ数カ月の間で最も調子がよい。ありがたい。

    地図を見れば、海に面した街、マンガロールがすぐそばだ。デカン高原の西側、海岸線に沿うように、南北およそ1,600kmに渡って伸びるこの西ガーツ山脈も、2012年にユネスコ世界遺産に指定されている。標高約1,000〜2,690mの山々が連なるこの周辺は、地球上で8つの「生物多様性ホットスポット」の1つだとのこと。絶滅危惧種の動植物がが少なくとも325種生息しているらしい。あまりにもダイナミックすぎてよくわからない。

    IMG_5992

    IMG_5988

    IMG_5989

    そんな広大な西ガーツ山脈の一隅に横たわる山道を通過して、クッケ・スブラマーニャ寺院へ。Archanaの家族、そして夫の家族にとっても、ここは先祖代々祀っている菩提寺のような存在で、Archanaは子供のころから毎年訪れているという。多くの巡礼者がひしめき合って参拝する中、彼女をよく知る僧侶の案内で、安全にご本尊の近くまで導いていただく。薄暗い祠の中に浮かび上がる黄金色の御神体。灯火の光を受けて、夢のように幻想的だ。

    人々の喧騒も、マントラの唱和も、鐘の音も、すべてが夢心地に渦巻く。

    IMG_5993

    スクリーンショット 2024-03-19 午後2.49.41

    IMG_5998<br /聞けばここは、ヴァースキ(Vasuki/八大龍王の一神「和修吉」)と呼ばれる蛇の神様を祀っているという。蛇……! わたしとArchanaは、同じ年齢で、同じ巳年(へび年)。これもまた、ご縁だと感じ入る。ちなみに彼女は、元ミス・インディアであり、かつては 弁護士でもあった才媛だ。インドの伝統文化などを伝えるSTUDIO MUSEの動画を作っていた時、彼女がモデル時代に撮影した写真をシェアしてくれた。それを動画にしている。彼女の内なる美しさが滲み出た、やさしい写真ばかりだ。

    今回の旅。Archanaのおかげで、短時間ながらも3つの寺院を堪能することができた。本当にありがとう。

    IMG_5691

    🇮🇳インドの多様性を映す、各地の伝統衣装に身を包んだ母と子の姿

  • WW9

    WW1

    WW2

    「神がディテールに宿りすぎているシヴァ寺院」を訪れたあと、リゾートに戻る道中にあるべルール(Belur)という町に立ち寄る。ここには、2023年、ユネスコ世界遺産に指定されたばかりのチェナケシェヴァ寺院(Chennakeshava Temple)があるのだ。インドには、ユネスコ世界遺産に指定されている場所が43カ所ある。そのうちの6カ所が、ここカルナータカ州に存在する。

    それ以外にも、世間には知られていないだけで、文化的にも歴史的にも価値のある建造物やすばらしき自然の産物は、このインド亜大陸に数多ある。住めば住むほど、知れば知るほど、そのことを実感する。

    さて、先に訪れた寺院は、破壊(と創造)を司る吉祥の最高神である「シヴァ神」を祀っていたが、チェナケシェヴァ寺院はブラフマー、シヴァに並んでヒンドゥー教三大神の一とされるヴィシュヌ神(遍く満たして維持する)を祀っている。

    この三大神(トリムールティ)は「三神一体」とされ、宇宙の創造、維持、破壊という3つの機能が「3人の神」でそれぞれに神格化されているが、このあたりの世界、広すぎて深すぎて理解も説明も難しい。

    1117年に完成したチェナケシェヴァ寺院。ヴィシュヌヴァルダナ王により、三世代、103年の歳月をかけて建設された。 [Go West 07]で紹介しているホイサレシューヴァラ寺院同様、インドの二大神話『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』の物語や、『バガヴァタ・プラーナ』などのヒンドゥー教の聖典が、可視化されている。また、12世紀当時の生活の様子、ダンサーやミュージシャン、動植物の石彫もちりばめられている。

    あまりにも特筆すべき要素が多すぎて、概要を紹介するのも困難につき。関心のある方は、ぜひとも以下のサイトをご覧いただければと思う。ここでは備忘録として、写真だけでも残しておきたい。

    WW3

    WW6

    WW5

    WW4

    WW7

    できるならば、写真を拡大して、じっくりと眺めてほしい。この精緻な彫刻を!

    地球上に点在する、長い歳月をかけて建造された歴史的な建築物を眺めるたびに思う。

    一番最初に、「図面」を描いたのは誰なのか。さらには、建造物の大枠が完成した後の「彫刻群」のイメージ図を描いたのは誰なのか。そもそも、はじめから完成図が存在したのか。誰がどこをどう掘るべきかを指示する現場監督は存在したのか。マハラーシュトラ州にあるエローラ石窟群を訪れたときにも、そのことがとても気になった。

    どういう段取りで、100年もの着工計画を立てたのか。

    四六時中、カンカンと、石を彫る音が響き渡っていたのだろう、この土地。100年間の空気の振動は、この土地が持つ「波動」を稀有なものに変える働きをしたに違いない。

    タイムマシンに乗って、10年おきの進捗を見て見たい。完成までの過程を知りたい。

    WW8

    WW10

    WW17

    WW11

    WW10

    WW12

    WW13

    WW15

    WW14

    WW16

    WW19

    WW20

  • MM10

    ミーティングを終え、遅いランチをすませたわたしたちは、陽が傾き始めた午後4時ごろ、リゾートを出る。目的地は、Archanaの勧めてくれた2つの寺院。そのうちのひとつは出発前、リゾート界隈の見どころを調べてた時に目にしていた。しかし、記事を一瞥するだけでは、なにがどう、大切な場所なのかピンとこない。遍く世界、予備知識がなければ、自分の好奇心の発火点すら見出せない。

    知る人の話を聞くことは、本当に大切だと今回はしみじみ痛感した。というのも、最初は「1カ所の寺院だけ訪れればいいのでは……?」という意見もあったのだが、Archanaが、どちらの寺院もそれぞれにすばらしく、甲乙つけ難いからどちらも行くべきだと提案してくれたのだ。結果、甲乙つけ難いことを実感した。

    MM6

    まずは、リゾートから遠距離にあるハレビドゥ (Halebidu)という町にあるホイサレシューヴァラ寺院 (Hoysaleshwara Temple)へ。ハレビドゥ は、かつてホイサラ帝国の首都であった。寺院の建造は、ヴィシュヌヴァルダナ王によって1121年ごろに着工され、約40年後の1160年に完成したという。

    MM1

    MM7

    MM2

    この寺院は、シヴァ神を祀るシヴァ派の寺院でありつつも、シャクティ派など女神の要素も包摂され、男性性と女性性が共在。またヒンドゥー教の寺院でありながら、ジャイナ教の要素も見られるなど、多様なテーマを崇敬している。南北には、滑らかに麗しい2体のナンディ(牝牛)が祀られている。

    圧巻なのは、寺院全体を取り巻く無数の彫刻、複雑なレリーフだ。

    車を降り、入り口ゲートから寺院に向かって歩き、その実態が明らかになるや、その圧倒的な外観に、「ほぇ〜」という間の抜けた感嘆の声が漏れる。心の中でオーマイガーを連発しながら随所を眺めるも、情報量が多すぎて、取り込めない。

    MM8

    MM3

    「神はディテールに宿る (God is in the details)」と言ったのは、建築家のミース・ファン・デル・ローエだが、これは、神がディテールに宿りすぎている。

    壁画を取り巻く要素。インドの二大神話『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』の物語や、『バガヴァタ・プラーナ』などのヒンドゥー教の聖典が、可視化されている。その精緻で躍動感あふれる姿! また、当時の南インドの人々の暮らし、動物や植物、ローカル言語の文字なども見られる。
    宇宙だ。

    ここで数時間、好きなだけ彫刻を眺め、手を合わせ、瞑想をし、日が暮れるまで「空」な心で過ごしたいと思える、そんな場所。

    多くを語れるほど知識がないので、文字情報はこの辺にしておく。Instagramのシステム上、写真は1投稿につき10枚しかアップロードできないのことから、普段は10枚に絞り込んでいるのだが、今回は絞り込みたくない。2寺院の写真は、2回ずつに分けて投稿する。

    MM9

    今、Wikipediaを見ていたところ、「ダンシング・サラスワティ」を見逃していた! 我が敬愛するサラスワティ(弁財天の起源)の踊っている姿! これは、この目で見たかった! 最後の写真は、Wikipediaから借用したもの。
    また、行きます。

    🖋Hoysaleswara Temple
    https://en.wikipedia.org/wiki/Hoysaleswara_Temple

    MM4

    MM5

    にほんブログ村 海外生活ブログ インド情報へ

  • SS4

    単なる「女友達との小旅行」とは異なる、YPOフォーラムメイトとの旅。2泊3日の短期間ながらも、毎月恒例のミーティングを実施する。旅をすることで、お互いをより深く知り合い、結束を強めることも目的だ。

    全メンバー9名が揃うのが理想的だが、みなそれぞれのライフがあり、100%参加は難しい。ともあれ、実質1日の活動日、日中はミーティングを行い、夕方からリゾートの近辺にある2つの寺院を訪れることにしたのだった。

    旅の前にあらかじめ、Google Mapを眺めながら下調べをした。他のメンバー数名は、すでに訪れたことのある寺院らしいが、わたしにとってはこの界隈、すべてが未踏の地。調べれば調べるほど、いくつもの見どころがあって驚く。しかし限られた時間につき、友人Archana(ランチを食べている女性)の勧める2つの寺院に絞り込むことにした。信仰心に篤い彼女からは、これまでの旅でも、寺院や儀礼にまつわることを学んできた。

    ちなみに我がフォーラムのメンバーは、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、チベット仏教徒、そして日本人の仏教徒……と、宗教の多様性に富んでいる。友人らの日常生活に溶け込む、それぞれの宗教の存在感は根源的かつ圧倒的。「とりあえず仏教徒」な「ほぼ無宗教」に近い大半の日本人にとっては、インドのみならず、多くの国における「信仰心」というものを、想像しづらいのではないかと思う。語るに難し。

    寺院の写真を撮りすぎて、しかし取捨選択するのも惜しすぎて、山ほどアップロードしてしまいそうなので、箸休めとしての、リゾートの情景を。南インドのコーヒー事情に関心のある方は、以下のブログをお読みいただければと思う。

    ☕️紅茶よりも長い歴史。南インドのコーヒーを巡る物語
    https://museindia.typepad.jp/eat/2021/05/coffee.html

    SS5

    SS6

    SS7

    SS3

    SS10

    SS2

    SS9

    SS8

    SS1

    にほんブログ村 海外生活ブログ インド情報へ

  • SE6

    太陽光を受けて熱い岩盤の上に設けられた700段余りの階段。日差しが照りつける中、素足で熱を受け止めつつ、息を切らして登った果てに、目に飛び込んできたバーフバリ像。全長17メートルの巨大な石像を見た瞬間に覚えた違和感は、その真新しさが理由だった。

    「本当に、1000年以上も前に作られたの?」と疑念が脳裏を過ぎる。981年に建立されたというが、パッと見「コンクリート製?」と思うほどだ。訝しく思い、バッグから資料を取り出し読み直すも、再構築されたという記述はない。

    前回投稿した頭部横顔の写真。螺髪や頬や肩には、シミひとつない滑らかさだ。わたしなど、横顔のシミが目立って仕方ないというのに。一説によると、バーフバリの美肌の秘訣は、12年に一度開催される「マハーマスタカビシェカ (MahaMastakabhisheka)祭」にあるようだ。

    日本でいうところの「灌頂(かんちょう/水や香水などの液体を頭部から注ぐもの)」に相当する祝祭。12年に一度行われるジャイナ教の重要な祭りで、前回、2018年の儀式は、西暦981年に始まった祝祭の、88回目だった。次は2030年だ。

    まず、祝祭の前の数週間は、精製水と白檀のペーストを像にかける。その後、マハーマスタカビシェカが始まると、特別に用意された1,008個の器を持った信者により、聖水が振りかけられる。

    その後、沐浴された像には、牛乳、サトウキビのジュース、サフラン、ギー、ターメリック、ヴァーミリオン(朱色の粉末)などがふりかけられ、花々や宝石なども捧げられる。

    1枚目の写真はWikipedia (Gommateshwara statue during the Grand Consecration in August 2018) より借用したもの。2018年の儀式の様子だ。

    この儀式こそが、バーフバリ像の鮮度を保っている理由だとされている。

    石像を吟味するに、一部、指先にわずかな損傷が見られる以外は、ほぼ完璧な状態。足に絡まる蔦や、蟻塚から這い出す蛇の様子などは、近代の芸術作品のようにさえ見える。

    SE9

    SE2

    ここ、シュラヴァナベラゴラは、2300年以上に亘って、ジャイナ教の文化、芸術、建築の集う聖地とされてきたようだ。このほかにも、数多くの寺院が点在しているという。果てしない。実に、果てしない。

    【ジャイナ教にまつわる他の記録】

    [ラジャスターン旅 03@ジャイサルメール](2017/12/20)
    タール砂漠の真ん中で。印パ国境。シルクロード。https://museindia.typepad.jp/2017/2017/12/jaisalmer.html

    [ラジャスターン旅 04@ジャイサルメール] フォトアルバム(2017/12/21)
    https://museindia.typepad.jp/2017/2017/12/jaisalmeralbum.html

    [ラジャスターン旅 05@ジョードプル]聳える城塞とジップライン。宮殿ホテルとマハラジャの歴史。(2017/12/21)
    https://museindia.typepad.jp/2017/2017/12/jodhpur.html

    [ELLORA エローラ] 仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教……。岩山に刻み込まれた、三つの宗教のかたち。(2011/02/06)
    https://museindia.typepad.jp/2011/2011/02/ellora.html

    神戸で生まれ育ったムンバイ在住のインド人女性たち〜ジャイナ教、豆腐の話題/STUDIO MUSE
    https://museindia.typepad.jp/2020/2020/10/kobe.html

    SE4

    SE7

    SE10

    SE8

    SE1

    SE5

    SE3

  • Sr6

    Sr5

    Sr3

    昨日の夕方、2泊3日の旅から戻ってきた。そもそもが濃い女子(女史)旅であるのに加え、都合4つの寺院を訪れ、情報過多で未消化だ。昨夜は11時にベッドへ入った。途中何度か目覚めたが、最後に起きたのは9時過ぎ。なんと10時間も爆睡していた。若々しい! その後、セラピストに来てもらいマッサージを受け、身体はリラックスしたものの、頭の中はまだ、見聞を吸収できていない。せめて写真を整理しつつ記録することで、体験を反芻する。

    Sr8

    Sr7

    インド亜大陸で生まれ、現在も信仰されている宗教は4つある。ヒンドゥー教(バラモン教)、スィク教、ジャイナ教、仏教だ。このほか、古代インド宗教の一つであり「インド哲学の異端派」とされているアージーヴィカ教という宗教も存在していたようだ。

    2011年の国勢調査によると、帰依者の数はヒンドゥー教(79.8%)、イスラム教(14.2%)、キリスト教(2.3%)、 スィク教(1.7%)、仏教(0.7%)、ジャイナ教(0.4%)と続く。このほか、少数派ながらも社会的影響力の強い「パールシー」と呼ばれるコミュニティの人々は、ゾロアスター教を信仰している。あらゆる側面において多様性が炸裂しているインドにおいて、宗教のそれを軽く説明するのは不可能につき、概要はこの辺にしておく。

    Sr10

    Sr4

    さて、ジャイナ教は、紀元前6世紀ごろ、仏教と同時期に、東インドで誕生した。ジャイナ教は徹底した不殺生(アヒンサー)を教義とし、遍く「生き物」を尊重。害虫さえも殺すことを厭う。「野菜を掘り起こす際、土壌中の虫を殺す可能性がある」ことに加え、「根は、野菜の命の源である」という理由から、玉ねぎや人参、芋などの根菜類も食べない。

    食べないから質素な食生活かといえば、そうではなく、限られた食材を大切に、自然の恵みに敬意を払いながら丁寧に調理し、食する文化がある。むしろ手間をかけているように思う。豆料理など、わたしも何度か食べたことがあるが、滋味があり、とてもおいしかった。

    土を耕すことを忌避する宗教的背景から、ジャイナ教徒には、商人や金融者が多い。信者数は極めて少ないながらも、一定した社会的地位を保つコミュニティである。インドを代表する商業コミュニティに、ラジャスターン州出自の「マルワリMarwari」がある。マルワリにはジャイナ教徒(ジェイン)も多く、彼らをして、マルワリ・ジェインと呼ばれる。わたしの友人知人にも、同コミュニティの家族が複数、存在する。

    初日、旅の目的地であるサクレシュプール(Sakleshpur)へ向かう途中、道中の見どころに立ち寄った。バンガロール中心部から西へ約144km。わずか3時間足らずの場所にあるシュラヴァナベラゴダ(Shravanabelagola ಶ್ರವಣಬೆಳಗೊಳ)というジャイナ教の聖地だ。

    ゴンマテーシュヴァラ寺院のある丘に近づくにつれ、頂上に立つ石造の頭部が明らかになる。1塊の花崗岩から作られたという全長17メートルの巨大な石像。彼の名はバーフバリ。バーフバリのバーフとは前腕を、バリ(バリン)は力が強いことを意味する。即ち「腕力が強い者」。別名ゴンマテーシュヴァラの名でも知られる。

    今から1000年以上前の西暦981年に建立されたというバーフバリ像。ジャイナ教の初代祖師である「リシャバ」の息子である彼は、兄と争ったことを後悔して出家。直立不動の姿勢で何年間も修行を続けたため、脚には蔦がからみ、足元には蟻塚ができたという伝説を具現化している。

    Sr2

    わたしは、参道の麓で車を降り、入り口付近にある小屋に靴を預けた。ここから裸足で、丘の上を登るのだ。まだ午前中とはいえ、夏の陽光を浴びた石は熱い。しかし、素足で歩くことこそ、ご利益がある気がする。黙々と歩き、寺院でバーフバリの父をはじめとするジャイナ教の聖人らの石像に手を合わせた後、寺院の外壁をぐるりと回って中央の伽藍へ。
    外壁に刻まれた魚や蛇、神々の彫刻が、わたしがとても好きなハンピの寺院「Malyavanta Hillでみたもの」と酷似していて、歴史的背景を調べたくなるが、ひとまず割愛。

    薄暗い寺院の入り口を通過した先に、陽光に照らされたバーフバリ像が現れた。頭部は仏陀と同様、右巻きの「螺髪(らほつ)」で覆われている。この石像を見た瞬間、違和感を覚えた。驚くほどに、「真新しい」のだ。今から1000年以上前に建てられたとは、到底思えない。石とて、苔蒸し、朽ちるはず。いったいどういうことなのか?(続く)

    Sr1

    Sr9

  • O4

    コーヒー農園のただ中にあるリゾートにて。

    ジャイナ教寺院。ヒンドゥー教のシヴァ神を祀る寺院。ヒンドゥー教のヴィシュヌ神を祀る寺院(ユネスコ世界遺産)……。

    わずか2日間の、しかもほんの短い時間。歴史が深く刻まれた3つの寺院を巡っただけで、今回もまた、遥か時空を超えた旅。

    長い歳月をかけて刻まれた石。素足で石に触れながら、合掌して目を閉じる。

    寺院の中の小宇宙が、脳裏で炸裂しながら無限に広がる。

    バンガロールから数時間の場所に、こんな宇宙があるなんて。

    南インドでの19年。今まで「見えなかったもの」「見ようとしなかったもの」が、無尽蔵にあることを再認識。

    Incredible India. Incredible Karnataka!

    昨日の夕日。

    今朝の朝日。

    折しも昨日はシヴァ神の祝祭日であり、国際女性デー。そんな日に、女友達とシヴァ神の寺院と訪れるもご縁。

    今日、もう一つの寺院に立ち寄った後、バンガロールへ帰る。

    それぞれの思い出は、改めて残そうと思う。

    O5

    O1

    O2

    O6

    O7

    O9

    O8

    O10

    O3

  • G6

    G10

    今、バンガロールから約250kmほど西に走った先にある、サクレシュプール(Sakleshpur)に来ている。コーヒー農園の只中にあるリゾートで、朝を迎えた。降り注ぐ朝日。無数の鳥らの、賑やかなさえずり……。

    毎年恒例の「女子(女史)旅」だ。YPOのフォーラムメンバーと、親睦を深める目的で開催する旅行。このことは、過去に幾度も記しているので詳細は割愛。ともあれ、基本的には年に一度、国内外1カ所ずつ、わたしたちは旅をしてきた。みなの予定を合わせるのは、なかなかに困難。今回は気軽な近場の旅行である。

    G3

    G7

    「観光」とは、光を観ること。我がキャリアの端緒は、海外旅行誌の編集者。1988年11月に初めて海外取材のため台湾へ赴いて以来、公私に亘るすべての旅が、わたしに光を与え続けている。遠い記憶、近い記憶、深い記憶、浅い記憶……。それぞれに陰影はあれど、非日常である以上、旅は五感を刺激して、新たな視座を与えてくれる。

    1996年4月に日本を離れて以来、わたしは、ずっと旅を続けているようなものでもある。混沌の日常のなかにも「光を見出す」習慣が、ついてしまった。

    2005年11月にインドへ移住して以降は、毎年、ニューヨークと日本を訪れていた。5月ごろに、ニューヨーク及び欧州への長期旅を、10月ごろに日本への一時帰国をするのがルーティンになっていた。他の旅行はその隙間に入れる。インド国内旅も、「それなりに」実現していたつもりだったが、仕事やプライヴェートで訪れるデリーやムンバイなど都市部への旅が中心。世間によく知られる観光地すら、未踏の場所も多いまま、20年が経とうとしている。

    「いつか行きたい」と漠然とした願望の大半は、実現できないまま歳月を重ねる。

    その一方でこのごろは、インド亜大陸に「宝石のように散りばめられた知られざる魅力ある地」の多さに気付かされることが多い。雑に扱われ、埃だらけで放置されている宝石が、この国には無数にあるのだということを知る機会が多い。その背景には、COVID-19パンデミックによる国内旅行の増加、道路交通インフラストラクチャーの整備、観光資源の発掘……といった理由が挙げられるだろう。

    ソーシャルメディアを通して、人々の旅の記録が拡散され、「ここどこ?」「え、近所じゃない?!」という事態も頻発。行きたい場所のブックマークは増えて増えて、とても網羅できない。

    そんな中、昨日はわたしは友人たちとは別行動で、早朝6時過ぎに家を出た。サクレシュプールへ向かう途中、バンガロール近郊の旅先としてよく知られるシュラヴァナベラゴダ(Shravanabelagola ಶ್ರವಣಬೆಳಗೊಳ)に立ち寄ることにしたのだ。バンガロール中心部から西へ約144km。わずか3時間足らずでたどり着くジャイナ教の聖地だ。

    途中のドライヴインで朝食休憩を取りつつの旅。かつて、ドライヴ旅行を避けていたのは、道路交通事情の悪さも大きな理由のひとつだった。しかしながら、このごろは、各地のハイウェイが整備されていて、ドライヴ旅が本当に快適になっている。他国に比べれば、運転のマナーが悪いなど、負の側面はまだまだある。それでも、ふとした拍子に、アメリカ横断大陸ドライヴの記憶が蘇る情景に出くわすなど、過去十数年での進化は目覚ましい。

    ひとまずは、ドライヴ旅の情景を残しておく。

    G1

    G5

    G9

    431789698_18389855809074607_1127548236756318329_n

    G2

    G8

  • At2

    😸今朝は月に一度のFM熊本収録日。2008年1月に開始以来(当初は月に2回だった)、今回でちょうど200回目だった。この間、DJの方も入れ替わり、現在は4人目。毎回、何を話そうかと話題を探す必要はなく、どの話題にしようかと「絞り込む」方が困難。それほどに、インドの日常は話題性豊かなのだ。いつもは、わたしが一方的に話す……という感じなのだが、今日は、特に話のテーマを決めず、DJの方に、今後どういう話をしましょうか……的な感じで、会話をさせてもらった。

    話の流れから、我が家の4猫の話になった時、強い関心を持ってもらえた。この頃は深度深くスケールも大きめの話題が多かったようなので、初心に返って日常的な親近感を抱いてもらえる話題も盛り込もうと思う朝。我が家の元野良4猫の話も尽きない。なにしろ、インドは「野良動物に餌を与えるのは国民の義務」だからな。「へ?!」と思われるよな。

    At10

    At8

    🎨昨日は、ほぼ毎週火曜日に開催されている「女性の勉強会」へ赴いた。スピーカーはラジャスタン州出身のテキスタイル・アーティスト、Pragati Mathur。幼少時、パリのポンピドーセンターを目にしたときに、色彩に対する感性を強く刺激されたとのこと。昔のポンピドーセンターの外観は、カラフルないくつものパイプに覆われた、斬新な建築物だったのだ。

    35年以上に亘り、テキスタイル・デザインの世界を歩んできたという彼女。故郷、地球、環境、精神世界、聖性、個人的な情念などを託した作品を産み、国内外のさまざまな建築物を彩ってきた。また、自らWeaver(織る人)として、さまざまな素材を「糸」にし、それらを織り、布にする。その作業に込められた感情にまつわるストーリーも、非常に興味深い。
    この日は、彼女が手がけたいくつかの作品と、その作品に込められた思い、また使用した素材や製作過程などについてを語ってくれた。

    At6

    At7

    At4

    中でも、彼女が最も時間を割いて説明してくれたのが、昨年来、折に触れて記してきたバンガロールの新空港ターミナル、略して「T2」に展示されている彼女の作品だ。天井に吊るされた渦巻くような布と、その周囲のオブジェが彼女の作品だ。完成までのプロセスの話もまた、非常に印象的だった。

    わたしは「T2」に関し、開港前から具体的な情報をシェアしてきた。またオープニングの様子、その後の取材コーディネーションで知った話なども含め、熱量高く紹介している。CEOであるHariとその妻Yashoから聞く話は、いずれも興味深いものばかりで、強く心を動かされるのだ。

    再掲載するが、「T2」は以下の指針をコンセプトに建築されている。まだ工事中の箇所もあるが、早晩、完成するであろう。

    [Four Guiding Principles/4つの指針]

    1. Terminal in a Garden/庭園の中のターミナル
    2. Sustainability/サステナビリティ
    3. Technology/テクノロジー
    4. Art & Culture/芸術と文化

    4つのテーマ、それぞれに、語りたいことは尽きず。

    「T2」の随所に、合計43人のアーティストによる60の作品が配されている。そのうちの数名は、わたしの友人知人も含まれている。作品に共通するテーマは、インドの伝統や文化。それに加えて「ナヴァラサ Navarasa」と呼ばれる9つの感情表現もある。

    アーティストの作品に加え、ASI (Archiaeological Survey of India) すなわちインド考古調査局の協力で、同局が管理する芸術作品も展示されている。これらは3カ月おきに作品を入れ替えつつ、展示されているようだ。

    「T2」を彩り、旅人の関心を惹きつけるアート。そのいずれもが、アーティストたちの精魂が込められた、真性の芸術品だ。その作品が誕生するまでの背景を知れば、より一層、興味深く眺め、受け止められる。「T2」を利用する際には早めに空港へ向かい、作品を鑑賞してほしい。飛行機に乗り遅れない程度に、じっくりと。

    At3

    At5

    At9

    後半の写真は、前回、取材をコーディネーションした際に撮影したもの。オフィスの入り口に飾られているのは、友人Tanya Mehtaの作品。彼女の世界観が、わたしは本当に好きだ。最後の写真は、先日、着物とサリーの比較展示会をしたときのもの。この『月刊 航空情報』という専門誌の取材を通して、「T2」について、より深く知ることができた。1951年に創刊されたというこの雑誌。わたしたちが持っている掲載誌、2023年12月号を以て、休刊になったという。

    At1

    ✈︎ケンペゴウダ国際空港ターミナル2/バンガロール新空港の背景にある物語の記録集(ぜひご一読を)
    https://museindia.typepad.jp/library/terminal_2/

    Bengaluru International Airport’s Terminal 2 becomes a haven of art